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糖尿病と眠気の関係性や症状がひどいときの対策
最近、異常な眠気に襲われていませんか?
通常の眠気は、コーヒーを飲んだり、ガムを噛んだりなどの気分転換で覚ませます。
しかし、強い眠気に襲われる場合や、頻繁に眠気が起こる場合は注意が必要です。
眠気の正体は、糖尿病によって引き起こされている症状かもしれません。
この記事では、糖尿病と眠気の関係性について解説しています。
糖尿病で眠気がひどい人や原因を知りたい人、隠れ糖尿病の可能性を疑っている人は、参考にしてみてください。
糖尿病による眠気は一般的な症状
糖尿病による眠気は、一般的な症状です。
糖尿病の症状のひとつとして、食後の激しい眠気が挙げられるからです。
なお、稀に糖尿病治療薬による血糖コントロールによって眠気が起こることもあります。
糖尿病による眠気に影響しているのは、主に空腹時や食後の血糖値です。
血糖値が下がる空腹時や、インスリンの過剰分泌によって血糖値が急降下する食後は、脳に必要なブドウ糖が不足するため、頭が働かなくなり眠気を引き起こします。
そのため、眠気は糖尿病でよく起こる一般的な症状なのです。
なお、糖尿病の症状については別の記事で詳しく解説しています。
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糖尿病による眠気の原因
糖尿病による眠気の原因は、低血糖(血糖値70㎎/dL以下)と高血糖(空腹時の血糖値が100㎎/dL以上)です。
その理由は、低血糖や高血糖が脳の働きに影響するからです。
なお、糖尿病の人は健康な人よりも低血糖や高血糖になりやすいため、眠気が起こりやすい傾向にあります。
低血糖で眠気が起こる原因は、脳に十分な量のブドウ糖が届かず、脳のエネルギーであるブドウ糖が不足して頭が働かなくなることです。
そして、高血糖では、脳の覚醒を促すホルモンであるオレキシンの分泌が止まることで眠気が起こります。
糖尿病で高血糖状態が続く場合には、オレキシンの分泌も長い時間抑制されるため、オレキシンの働きが弱まって脳の状態を制御できなくなり、ひどい眠気に襲われやすくなります。
このように、糖尿病による眠気は、低血糖や高血糖が原因となって引き起こされるのです。
糖尿病と空腹時の眠気
糖尿病による空腹時の眠気は、オレキシンが分泌されなくなることが原因で起こります。
理由としては、糖尿病によって空腹時に血糖値が高い状態が続くことで、脳を覚醒させるオレキシンという神経ペプチドが分泌されなくなり、眠気を強く感じるためです。
また、長い時間空腹の状態が続くと、次に食事を取ったときに血糖値が急上昇して強い眠気が起こるため、食事の摂り方にも注意が必要です。
健康な人であれば、空腹になると血糖値が低くなってオレキシンを刺激して活性化するため、そこまで眠くなることはありません。
しかし、糖尿病や隠れ糖尿病、糖尿病予備群の場合、インスリンの働きが悪くなって血糖値が高い状態が長く続きます。
すると、オレキシンの分泌が長く抑制されるため、健康な人よりも眠気を強く感じやすくなるのです。
こういったオレキシンの分泌不足による影響が、空腹時に眠気が起こる原因となっています。
糖尿病と食後の眠気
食後の眠気には、消化と血糖値の変動が関係しています。
消化や血糖値の変動によって、脳で酸素やブドウ糖が不足することで眠気が起こるからです。
食後は、食事を消化するために血液が胃腸に集中するため、脳への血液循環が一時的に悪くなります。
すると、酸素や栄養素が脳に送れなくなり、眠気が引き起こされるのです。
また、食後の血糖値の急上昇によるインスリンの過剰分泌も原因として挙げられます。
食事で血糖値が急激に上昇すると、血糖値をコントロールするためにインスリンを大量に分泌することで血糖値を下げようとします。
その結果、体が低血糖状態になり、脳のブドウ糖も不足して強い眠気が起こるのです。
また、食後にあらわれる強い眠気は、血糖値スパイクが起きている可能性も考えられます。
血糖値スパイクは、健康診断などでは見つけることが難しいため、隠れ糖尿病とも呼ばれています。
隠れ糖尿病や糖尿病予備群の人は、糖尿病に進展する可能性が高い傾向にあるため注意が必要です。
このように、食後の眠気には消化と血糖値の変動が関係しています。
糖尿病と昼食後の眠気
糖尿病の人は、健康な人よりも血糖値の上昇による影響を受けやすく、昼食後に強い眠気に襲われやすくなっています。
昼食後の眠気には、生体リズムと食後の血糖値が大きく関係しているのです。
人間の体には、覚醒と睡眠のサイクルによって構成された生体リズムがあり、自然と眠くなる時間帯と覚醒する時間帯が訪れます。
一般的に、昼食後の午後2時前後は眠くなる時間帯とされています。
また、昼食は1日の中でも最も多く食事を摂取するとされるタイミングです。
血糖値が上昇しやすいため、昼食後はより強い眠気が起こりやすくなります。
そのため、健康な人よりも血糖値の上昇による影響を受けやすい糖尿病の人は、昼食後に強い眠気に襲われやすいのです。
血糖値スパイクとは?
血糖値スパイクとは、食後に短時間で血糖値が急上昇と急降下を起こす現象のことです。
普段の血糖値は正常であるにも関わらず、食後に限って血糖値が急上昇、急降下することから食後高血糖とも呼ばれています。
食後のみ高血糖になるため、検査でも見つけにくく、自覚症状もほとんどありません。
血糖値スパイクが起こるのは、インスリン分泌が正常におこなわれていないことが原因です。
通常は、食事をすると血糖値が高くなり、2時間程度経過すると、血糖値は140㎎/dL未満になります。
しかし、血糖値スパイクの場合は食後2時間以上経過しても血糖値が下がらず、基準値の140㎎/dLを超えてしまいます。
すると、血糖値をコントロールするためにインスリンが過剰に分泌されて血糖値が急降下し、眠気が起こるのです。
血糖値スパイクでは眠気以外にも、だるさや頭痛、気絶などの症状が起こることもあります。
例えば、満腹になるまで食事を取っていたり、炭水化物中心の食事が多かったり、早食いをすると食後の血糖値が上がりやすくなります。
血糖値スパイクは、このように食後の血糖値が急上昇、急降下する現象のことです。
糖尿病で眠気がひどいときの対策
糖尿病で眠気がひどいときの対策は、血糖値の変動を緩やかにすることがポイントになります。
血糖値の変動が緩やかになると、血糖値スパイクや高血糖によるオレキシンの不足を防いで眠気を軽減できるからです。
そこで、具体的な対策をまとめてみました。
・ゆっくり時間をかけて食べる
・食べる順番に注意する
・ガムをかむ
・散歩やストレッチをする
・腹八分目に抑える
時間をかけて食べたり、食べる順番を気にすることで、血糖値の急上昇を防げます。
また、ガムを噛むと唾液の分泌量が増え、消化をサポートできます。
さらに、噛むことは口内の血液循環が促進されるため、脳への酸素供給が増えて眠気を和らげられるのです。
なお、食べ過ぎは血糖値の上昇につながるため、食事の量は腹八分目に抑えることが重要です。
このように、糖尿病で眠気がひどいときは、血糖値の変動を緩やかにする対策をおこなうことが重要になります。
糖尿病による頭痛を伴う眠気
糖尿病で頭痛を伴う眠気が起こった場合は、血糖値の激しい変動を避けて安定させることが必要です。
その理由は、頭痛を伴う眠気は血糖値の上昇や降下によって血管が収縮したり、血液の流れが悪くなることが原因で起こる症状だからです。
血糖値が低い場合は、血管の収縮によって頭痛を伴う眠気が起こります。
また、血糖値が高い場合は、血流が悪くなり首や肩、背中などのコリが強くなることで慢性的な頭痛が起こりやすくなります。
頭痛を伴う眠気起こった場合の対策は、低血糖の場合は、すぐにブドウ糖を摂取してください。
そして、血糖値が高い場合は首や肩、背中などをほぐすと血流がよくなり、頭痛の改善につながります。
このように、糖尿病で頭痛を伴う眠気が起こった場合は、血糖値の激しい変動を避けて安定させることが大切です。
糖尿病による眠気とだるい症状
眠気やだるいといった症状が起こったときは、血糖値に合わせた対策が必要になります。
その理由は、糖尿病による眠気やだるさは高血糖や低血糖が原因となって起こる症状だからです。
なお、血糖値ではなく、糖尿病の合併症を発症していることが原因の可能性も考えられます。
糖尿病による眠気やだるさが起こったときの対策は、以下の通りです。
・高血糖の場合は、糖分が含まれていない飲み物を多めに飲む
・低血糖の場合は、ブドウ糖や砂糖を取る
高血糖で症状が出ている場合は、応急処置として水やお茶などの糖分が含まれていない飲み物を多めに飲むようにしましょう。
ただ、高血糖で症状が起こっている場合は、血糖コントロールがかなり悪化している可能性があるため、症状が続くようであれば医療機関の受診をおすすめします。
また、低血糖の場合はブドウ糖や砂糖が含まれているジュースやラムネなどを取ってください。
このように、糖尿病による眠気やだるい症状には、血糖値に合わせた対策をおこなうことが大切なのです。
眠気の原因が糖尿病ではないケース
眠気は、糖尿病以外の病気や日常生活が影響して起こることがあります。
糖尿病が原因ではない場合の眠気の理由は、以下の通りです。
・睡眠時無呼吸症候群
・ナルコレプシーや過眠症
・脂肪肝
・睡眠時間が短い
糖尿病以外で眠気が起こる原因は、これらの生活習慣や病気によって睡眠の質が低下することが原因として挙げられます。
睡眠時無呼吸症候群では、生活習慣が乱れている人や肥満の人に多く見られる病気です。
睡眠中に呼吸が止まったり苦しくなるため、深い睡眠がとれなくなり慢性的に睡眠不足の状態になります。
また、睡眠時間が短いこと以外にも、スマートフォンやPCでブル―ライトの影響を受けている人も、睡眠の質が低下する傾向にあります。
睡眠時間をしっかりとっていても、睡眠の質が悪ければ身体が回復できません。
このように、糖尿病以外の病気や日常生活の影響で眠気が起こる場合もあります。
糖尿病による眠気以外の症状
糖尿病は、眠気以外にも様々な症状があります。
糖尿病で起こる症状は、以下の通りです。
・めまいや立ちくらみ
・頭痛
・全身の倦怠感や疲労感
・集中力の低下
・手足のしびれや冷え、むくみ
・のどの渇き
・目がかすむ、視力の低下
・体重減少
・多尿、頻尿
糖尿病で様々な症状が起こる理由は、インスリンが十分に働かなくなり血糖値が高い状態が長く続くからです。
糖尿病は症状の自覚が難しい病気で、気づかないうちに進行していくこともあります。
そのため、これらの症状が現れたときは糖尿病を疑い医師に相談しましょう。
治療をせずに放っておくと血管が傷つき、糖尿病網膜症や糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの合併症を引き起こす可能性もあります。
このように、糖尿病には眠気以外にも様々な症状があるのです。
まとめ
糖尿病と眠気についてのポイントをまとめました。
- 糖尿病の人が眠気に襲われるのは一般的な症状で、低血糖、高血糖が原因
- 空腹時の眠気はオレキシン不足で起こる
- 食後の眠気は消化と血糖値が関係している
- 眠気がひどい場合は、血糖値を激しく変動させない対策が重要
- 眠気の原因が糖尿病ではない場合、他の病気や睡眠の質の低下が考えられる
糖尿病の一般的な症状である眠気が起こる原因には、血糖値が大きく影響しています。
食事方法に気をつけたり、睡眠の質を向上したりと、眠気が起こらないような対策を心がけましょう。
Q&A
糖尿病と眠気について、よくある質問をまとめました。
ぜひ、参考にしてください。
Q.糖尿病薬の副作用で眠気が起こる?
A.眠気は、糖尿病治療薬でも起こります。
内服薬のメトホルミンでは眠気の副作用が報告されています。
ただ、発現率は0.1%と低い確率です。
また、インスリン注射は低血糖になりやすいため、低血糖によって眠気が起こることもあります。
Q.糖尿病になるとすごく眠くなるのはなぜですか?
A.糖尿病で眠くなる原因は、血糖値のコントロールがうまくできなくなるからです。
血糖値が低い場合は脳に糖分が行き渡らなくなり、エネルギーが足りなくなることで眠気が起こります。
また、血糖値が高い場合はオレキシン不足になるので、脳が睡眠状態に入ろうとして眠くなります。
Q.血糖値スパイクによる眠気対策は?
A.血糖値スパイクによる眠気には、ゆっくり食べることや食事内容の見直しなどの対策が有効です。
早食いをせず、ゆっくり食べることで血糖値の急上昇を防げます。
また、炭水化物や糖質の摂り過ぎを避け、食物繊維を含む食品を意識的に取るなど食事内容を見直すことも、血糖値を急上昇させないために効果的です。